2014年07月07日

【論文】ウミガメ産卵巣の犬による食害

Roaming characteristics and feeding practices of village dogs scavenging sea-turtle nests.
Ruiz-Izaguirre et al. 2014
Animal Conservation, doi:10.1111/acv.12143


野犬によるウミガメ産卵巣荒らしの被害がけっこう世界中で知られているそうです。この論文では地域の犬に発信機を取り付け行動を追跡し、ウミガメ産卵巣を荒らす個体とそうでない個体の行動の違いを検証しています。

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その結果、ウミガメ産卵巣を荒らす個体は荒らさない個体に比べて行動圏が広いことが示されました。また、この研究では飼い主へのインタビューなども行われ、栄養状態も調査しているのですが、どうやら腹減ってる個体ほど広くウロウロしてウミガメの産卵巣を荒らす傾向がみられるようです。そんなわけで、カメのためにも飼い主は犬にきちんと餌を与えましょう、というオチの論文でした。

日本国内では犬による被害を聞いたことはあまりない気がしますが、日本の犬はきちんと餌を与えられているからなんでしょうか。野良犬のこともあるし、日本で起こらないこともないと思うのですが。大型哺乳類による食害は八重山の方でリュウキュウイノシシによる食害があるらしい、というハナシを聞いてはいるのですが、僕が沖縄本島をウロウロしていた頃には少なくともやんばるでは大型哺乳類による食害はなかったような気がします(やんばるにもリュウキュウイノシシはいるけど、八重山ほど多くない)。世界ではマングースによる食害も報告されている一方で、マングース天国の沖縄では食害の報告がなかったり、この辺の違いがちょっと気になるようなならないような感じです。また沖縄で暮らすチャンスがあれば検討してみたい課題です。
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2014年07月06日

【論文】オサガメ産卵巣の砂中温度と性比

High beach temperatures increased female-biased primary sex ratios but reduced output of female hatchlings in the leatherback turtle.
Tomillo et al. 2014
Biological Conservation, 176, 71–79


ウミガメ類を含むカメの仲間は卵の期間をどれくらいの温度で過したかによって性が決まる温度性決定というシステムを持っています。ウミガメの場合は29.5度を境にそれ以上だとメス、それ以下だとオスになります。そんなわけで、近年大きな環境問題として取り上げられている地球温暖化がこのまま進むとウミガメはメスばかりになってしまうのではないか、というようなことが言われています。

この研究では、砂中温度の性への影響だけでなく、卵の正常な発生、つまり無事子ガメに育つかどうかまで調べています。その結果、これまで言われてきた通り、確かに砂中温度が高いと性比はメスに偏るのですが、あまり高温になってしまうと卵の正常な発生率が著しく低下してしまうことが明らかになりました。
fig1.jpg
赤く示した、だいたい28.3〜30.4度の範囲を外れると卵の正常な発生率が極端に低下することがわかります。

化石記録で知られているかぎりでは白亜紀初期から産出したSantanachelys gaffneyiが最古のウミガメとして知られています。以来、地球は長期的な気候変動で何度も温暖な時期や寒冷期を経験してきたわけですが、ウミガメ類の性比は温度との関係だけで考えればその間に何度も偏ってきたはずです。しかし、この研究では確かに性比は偏るものの、実際に成長して子ガメとして海に戻っていく個体の性比を見ると、これまで考えられてきたよりは偏っていないことがわかります。

ここから先は論文には書いていないことですが、砂中温度への耐性が幅広いとこうした環境変化によって性比に偏りができて、個体群全体が影響を受けることもありそうです。耐性の狭さは個体群内の性比を一定に保つために得られた適応の結果なのかもしれません。

【追記】「耐性の狭さは個体群内の性比を一定に保つために得られた適応」は群淘汰ではないか、という指摘がありました。「温度耐性があまり広くなかったから環境の変化に振り回されて性比が極端に偏ることなくやってこれた」と表現すべきでした。
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2014年06月18日

【論文】ハバネロを用いたウミガメ産卵巣の保護

こんな論文見つけました。

Use of Habanero Pepper Powder to Reduce Depredation of Loggerhead Sea Turtle Nests
Lamarre-DeJesus & Griffin, 2013
Chelonian Conservation and Biology 12(2), 262-267.


ハバネロを用いたウミガメ産卵巣の保護

ウミガメの産卵巣は100個近い卵が眠っているため、掘りだすことができれば重要なタンパク源となります。以前紹介した論文ではマングースによる食害が報告されました。また、沖縄本島でのアカマタによる食害も写真で紹介しました。この調査を行った地域ではコヨーテが主な捕食者らしいのですが、地域によっては他にもアライグマやキツネ、アルマジロなんかもウミガメの卵を狙ってやってくるそうです。

【論文】ウミガメの卵:産卵深度と被食の関係

この論文は、これらの野生生物によるウミガメ産卵巣の食害防除策として、ハバネロを使って捕食者回避を試した報告です。この研究では66個のアカウミガメ産卵巣を対象として、対策なし10巣、従来の網掛けによる防除33巣、卵の直上にハバネロ10巣、産卵巣の表層にハバネロ10巣を準備してコヨーテによる食害の被害率を比較しています。その結果、対策なしと直上にハバネロでは半分近くの産卵巣が食害に遭いましたが、網掛けと表層ハバネロでは著しく食害率が低下したようです。従来の網掛けによる食害防除は砂掘って網掛けして、と作業の手間もかかるし1巣あたり7.5ドルというコストがかかる一方、ハバネロは砂に混ぜるだけで1巣あたり2ドルとコストも低いため、食害防除として有効なのでは、と提案されています。

一方で、今回は食害率のみを比較していい結果が出た、と報告できましたが、卵から出てきたばかりの子ウミガメにハバネロが及ぼす影響についてはノータッチであることについても言及しています。確かに生まれてきたばかりのカメの目や鼻にハバネロが…と考えるととてつもなく痛そうですし、しかもその後海水に入るんですよねそれなんて罰ゲームですか、という気がしないでもありません。子ガメは走光性といって波あたりが光る方向を目指して海に入るわけですが、目を潰されてしまってはそれどころではありませんし。

そんなわけで今後は子ガメへの影響も検討していく必要がありますね、という内容の論文でした。
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2014年01月28日

【論文】ウミガメの卵:産卵深度と被食の関係

やや古い論文ですが。

How depth alters detection and capture of buried prey: exploitation of sea turtle eggs by mongooses.
Leighton et al. 2009
Behavioral Ecology 20(6),1299-1306.


マングースによるウミガメの卵の食害に関する研究です。舞台はバルバドス。ここではマングースは移入されてきた外来生物ですね。この研究ではタイマイの産卵巣について、どれだけ深く穴を掘ったかが食害されやすさにどれだけ影響するかを検証しています。

この研究によると、産卵巣の発見されやすさに深さはあまり関係ないのですが、実際掘り始めて見つけられるかどうかには大きく影響しているようだ、とのことです。実際に屋久島のウミガメ調査では、あまりに波打ち際に産んでしまってきっと死んでしまうなぁ、というような産卵巣は移植したりもするのですが、産卵痕跡があっても一度埋められてしまうとなかなか卵を見つけることができないのはよくあることです。

この研究で対象となっているマングースはジャワマングースで、沖縄でも外来生物として大きな問題になっています。僕の知る限りでは沖縄本島でのマングースによるウミガメ卵食害はまだ記録がなかったと思うのですが、島によってどうしてこのような行動の違いが出てくるのか、興味深いところでもあります。

ジャワマングースの原産地もウミガメの産卵が知られる地域です。原産地では卵の食害はどうなっているのでしょうか…と気になってマングースでググってみたのですが、沖縄に侵入したマングースは現在ジャワマングースではなくフイリマングースという別種ということになっているようですね。西インド諸島のものもフイリマングースのようですから、この研究の舞台であるバルバドスに侵入したマングースもたぶんフイリマングースでしょう。wikipediaによれば、フイリマングースの原産地はミャンマー、中国南部、バングラデシュ、ブータン、ネパール、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランだそうです。ウミガメの産卵も知られている地域が含まれています。ウミガメ産卵巣荒らしがもともと生活史の一部としてあったのか、それともバルバドスで学習した結果その行動が定着したのか。また、フイリマングースの原産地を見ると、ブータン・ネパールのような内陸国が含まれています。バルバドスの侵入個体群がインドのような海岸地域由来、沖縄の侵入個体群が内陸地域由来、というようなもともとの生活史を反映しているのだったら面白いですね。マングースの分子系統によれば、日本に侵入したマングースはインド・パキスタンの系統に近いようです(Veron et al. 2007)。インド・パキスタンはインド洋に面しており、ウミガメの産卵も知られています。現地でウミガメ卵の食害があるようなら沖縄でもウミガメ卵にアタックしてもよさそうですが…。この研究で扱われたバルバドスのマングースについてはVeron et al. (2007)では残念ながら扱われておらず、彼らがどこ由来の系統なのかよくわかりませんでした。侵入先での行動の多様性とでもいうのでしょうか、他の生き物でこういう研究例があるのかどうかちょっと気になりました。


沖縄でのウミガメ卵食害では、アカマタという在来ヘビがウミガメの産卵巣にアタックすることが知られています。

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↑なんかいる。

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↑潜っていきました。

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↑出てきた!

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↑デカい!

しかしこの行動も沖縄のどこでも見れるわけではなく、一部の砂浜でのみ観察されています。また、八重山ではリュウキュウイノシシによる卵食害が報告されている一方、沖縄本島ではまだ報告されていません(こちらはただ本当のイノシシ個体数が八重山に比べて少ないからというだけのような気もしますが)。異なる地域間での行動の違いというのは生態学の研究テーマとして面白いものだと思います。いや侵入先では全部根絶してほしいと思いますけどね。
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2013年11月25日

【論文】ウミガメに乗った外来生物

珍しい報告です。とりあえず僕はまだ日本では見たことがありません。

Unintended backpackers: bio-fouling of hte invasive gastropod Rapana venosa on the green turtle Chelonia mydas in the Rio de la Plata Estuary, Uruguay.
Lezama et al. (2013)
Biological Invasions, 15, 483-487.
アオウミガメに乗った外来生物:アカニシ貝

akanisi.jpg

写真の通りです。

こんなデカい巻貝が付着しているカメは僕も見たことがありません。このアカニシは90年代頃にこの海域に侵入してきたようですが、これがまたウミガメに乗ってさらに分布を広げてしまうんではないか、またこの巨大な殻がウミガメの遊泳に余計なコストとなってマイナスの影響を与えているのではあるまいか、と二重の意味で心配されています。

ところでこのアカニシガイというのはどうやらとてもおいしい食材のようで、日本ではけっこう重宝されているようです。また、昨今の偽装表示問題でも取り上げられニュースになっておりました。美味しいなら美味しいでそのままアカニシ貝って書いて出せばいいのに…

どうでもいいハナシですけど写真の漂着死体、通常のウミガメストランディング臭に加えてさらに貝の腐臭ってこの現場本当にキツそうですね。さすがの僕もちょっと耐えられる気がしません。
posted by かめふじ at 07:43| Comment(1) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする