2014年07月06日

【論文】オサガメ産卵巣の砂中温度と性比

High beach temperatures increased female-biased primary sex ratios but reduced output of female hatchlings in the leatherback turtle.
Tomillo et al. 2014
Biological Conservation, 176, 71–79


ウミガメ類を含むカメの仲間は卵の期間をどれくらいの温度で過したかによって性が決まる温度性決定というシステムを持っています。ウミガメの場合は29.5度を境にそれ以上だとメス、それ以下だとオスになります。そんなわけで、近年大きな環境問題として取り上げられている地球温暖化がこのまま進むとウミガメはメスばかりになってしまうのではないか、というようなことが言われています。

この研究では、砂中温度の性への影響だけでなく、卵の正常な発生、つまり無事子ガメに育つかどうかまで調べています。その結果、これまで言われてきた通り、確かに砂中温度が高いと性比はメスに偏るのですが、あまり高温になってしまうと卵の正常な発生率が著しく低下してしまうことが明らかになりました。
fig1.jpg
赤く示した、だいたい28.3〜30.4度の範囲を外れると卵の正常な発生率が極端に低下することがわかります。

化石記録で知られているかぎりでは白亜紀初期から産出したSantanachelys gaffneyiが最古のウミガメとして知られています。以来、地球は長期的な気候変動で何度も温暖な時期や寒冷期を経験してきたわけですが、ウミガメ類の性比は温度との関係だけで考えればその間に何度も偏ってきたはずです。しかし、この研究では確かに性比は偏るものの、実際に成長して子ガメとして海に戻っていく個体の性比を見ると、これまで考えられてきたよりは偏っていないことがわかります。

ここから先は論文には書いていないことですが、砂中温度への耐性が幅広いとこうした環境変化によって性比に偏りができて、個体群全体が影響を受けることもありそうです。耐性の狭さは個体群内の性比を一定に保つために得られた適応の結果なのかもしれません。

【追記】「耐性の狭さは個体群内の性比を一定に保つために得られた適応」は群淘汰ではないか、という指摘がありました。「温度耐性があまり広くなかったから環境の変化に振り回されて性比が極端に偏ることなくやってこれた」と表現すべきでした。
posted by かめふじ at 02:27| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: