2014年01月28日

【論文】ウミガメの卵:産卵深度と被食の関係

やや古い論文ですが。

How depth alters detection and capture of buried prey: exploitation of sea turtle eggs by mongooses.
Leighton et al. 2009
Behavioral Ecology 20(6),1299-1306.


マングースによるウミガメの卵の食害に関する研究です。舞台はバルバドス。ここではマングースは移入されてきた外来生物ですね。この研究ではタイマイの産卵巣について、どれだけ深く穴を掘ったかが食害されやすさにどれだけ影響するかを検証しています。

この研究によると、産卵巣の発見されやすさに深さはあまり関係ないのですが、実際掘り始めて見つけられるかどうかには大きく影響しているようだ、とのことです。実際に屋久島のウミガメ調査では、あまりに波打ち際に産んでしまってきっと死んでしまうなぁ、というような産卵巣は移植したりもするのですが、産卵痕跡があっても一度埋められてしまうとなかなか卵を見つけることができないのはよくあることです。

この研究で対象となっているマングースはジャワマングースで、沖縄でも外来生物として大きな問題になっています。僕の知る限りでは沖縄本島でのマングースによるウミガメ卵食害はまだ記録がなかったと思うのですが、島によってどうしてこのような行動の違いが出てくるのか、興味深いところでもあります。

ジャワマングースの原産地もウミガメの産卵が知られる地域です。原産地では卵の食害はどうなっているのでしょうか…と気になってマングースでググってみたのですが、沖縄に侵入したマングースは現在ジャワマングースではなくフイリマングースという別種ということになっているようですね。西インド諸島のものもフイリマングースのようですから、この研究の舞台であるバルバドスに侵入したマングースもたぶんフイリマングースでしょう。wikipediaによれば、フイリマングースの原産地はミャンマー、中国南部、バングラデシュ、ブータン、ネパール、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランだそうです。ウミガメの産卵も知られている地域が含まれています。ウミガメ産卵巣荒らしがもともと生活史の一部としてあったのか、それともバルバドスで学習した結果その行動が定着したのか。また、フイリマングースの原産地を見ると、ブータン・ネパールのような内陸国が含まれています。バルバドスの侵入個体群がインドのような海岸地域由来、沖縄の侵入個体群が内陸地域由来、というようなもともとの生活史を反映しているのだったら面白いですね。マングースの分子系統によれば、日本に侵入したマングースはインド・パキスタンの系統に近いようです(Veron et al. 2007)。インド・パキスタンはインド洋に面しており、ウミガメの産卵も知られています。現地でウミガメ卵の食害があるようなら沖縄でもウミガメ卵にアタックしてもよさそうですが…。この研究で扱われたバルバドスのマングースについてはVeron et al. (2007)では残念ながら扱われておらず、彼らがどこ由来の系統なのかよくわかりませんでした。侵入先での行動の多様性とでもいうのでしょうか、他の生き物でこういう研究例があるのかどうかちょっと気になりました。


沖縄でのウミガメ卵食害では、アカマタという在来ヘビがウミガメの産卵巣にアタックすることが知られています。

140.jpg
↑なんかいる。

240.jpg
↑潜っていきました。

340.jpg
↑出てきた!

440.jpg
↑デカい!

しかしこの行動も沖縄のどこでも見れるわけではなく、一部の砂浜でのみ観察されています。また、八重山ではリュウキュウイノシシによる卵食害が報告されている一方、沖縄本島ではまだ報告されていません(こちらはただ本当のイノシシ個体数が八重山に比べて少ないからというだけのような気もしますが)。異なる地域間での行動の違いというのは生態学の研究テーマとして面白いものだと思います。いや侵入先では全部根絶してほしいと思いますけどね。
posted by かめふじ at 11:48| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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