2013年11月24日

【論文】ウミガメの生残率はどれくらい?

僕はテレビもってないので見てないんですけど、先日アカウミガメのテレビ番組がやってみたみたいですね。で、これは前からずっと気になっていたことなんですが、こういうテレビ番組のナレーションでは「この子ガメのうち無事成体になれるのは5000頭に1頭と言われています」みたいなのがもう決まり文句みたいな感じで言われるわけですよ。まぁ海洋生物なんてのは初期減耗で一気に減るもんですからそこはそれでいいんですけど、それにしてもこの5000分の1という数字はどこからきたの、というところがずっと気になっていたのです。

5000分の1ですよ。思いっきり話を単純にしてしまいますけど、一頭のメスが1回の産卵でおよそ80〜120個くらい産卵します。ここでは一回100個の卵を産むとしましょう。で、一頭のメスは2〜3年に一回産卵期を迎え、1シーズンに3〜5回上陸して産卵するわけです。ここでは5回としましょうか。で、産んだ卵の全部が全部孵化して海に向かうわけでもありません。同じ浜でも産卵した場所によって孵化率はまちまちですが、ここでは8割孵化すると仮定します。そうすると、1頭のメスのウミガメは1シーズンに500個の卵を産んで、その中の400個が孵化して海に向かうわけです。雌雄比1:1と仮定するとメス成体の数は半分です。実際に5000頭に1頭しか成長して繁殖しないのであれば、ウミガメのメス成体は最低でも10000個体の子ガメを海に向かわせなければならないのです。1シーズンに400個体ですから、実に25シーズンも産卵にやってこなくては個体群が維持できない計算になります。産卵周期が2年に1回だとすると50年間無事に産卵し続けてようやくトントンという計算です。ウミガメの寿命ってのは実際にはよくわかっていないのが現状なのですが、さすがにこれだけ生残率が低かったらとっくの昔に絶滅してるんじゃないの、と思っていました。

で、その番組でも「5000分の1云々」と言ってたっぽいんですけど(参考ツイ)、ソースはなんなのよ、と。子ガメは甲長40pくらいまでどこで何してるかはほとんどわからなくてロストエイジなんて呼ばれちゃうくらいなのに「5000分の1なのです」なんて言っちゃっていいのかよ、と。

というわけで今日紹介する論文はこちらです。

Estimating survival rates of uncatchable animals: the myth of high juvenile mortality in reptiles.
Pike et al. (2008)
Ecology, 89(3), 607-611.

この論文ではウミガメだけでなく淡水カメやトカゲ、ヘビなどについても幼体の生残率の推定をしています。推定方法の詳細は省略しますが、そこではアカウミガメは0.002(500分の1)、アオウミガメでは0.005(200分の1)とこれまでソースなく言われてきた数字よりも高い生残率がはじき出されたのです。

ここで生残率が高かったから保全の必要はない、みたいな方向にいっちゃうと困るのですが、この研究をきっかけに従来よりも意外に生残は良いっぽいのにどうしてウミガメ全体の個体数は減っているとされているんだろう?というように考えるきっかけになるといいですね。
posted by かめふじ at 20:34| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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