2013年08月23日

【論文】ウミガメの漁業混獲を減らす

Developing ultraviolet illumination of gillnets as a method to reduce sea turtle bycatch.
Wang et al. in press.
Biology Letters, 9(5), 20130383.


ウミガメ類はワシントン条約で取引が規制されたり、なんだかんだと絶滅を危惧されている海洋生物の一つです。このウミガメ類の減少要因としてよく挙げられているのが、開発による産卵地の荒廃で産卵数が減っている、という点と、もう一つは漁業による混獲です。僕がよく調査させてもらっている定置網漁では、定置網じたいが大きなイケスみたいなものでウミガメが溺れて死ぬことはあまりないのですが、海中に設置する刺し網にひっかかってしまうと、呼吸のために水面に上がれずそのまま窒息死してしまいます。

この研究では、刺し網に紫外線照明をつけることで、ウミガメの死亡が著しく減少したことを報告しています。

fig1.jpg

左が通常の刺し網による混獲率、右がLED照明つき刺し網による混獲率。4割近く混獲数が減少しています。

この照明付き刺し網でウミガメの死亡が減った、それはよかっためでたしめでたし、と締めることができればいいのですが、ここで問題が一つ。そもそも狙っていた漁獲まで照明つき刺し網で減ってしまっては漁師さんたちは困ってしまいます。というわけで漁獲の減少率についても比較してみました。

fig2.jpg

色つきが通常の刺し網による漁獲、白がLED照明つき刺し網による漁獲です。こうして見ると、本来の狙いである漁獲には照明による効果がほとんどないことがわかりました。ウミガメの可視光については、産卵場の街灯の影響などでよく研究されてきています。対象魚種とウミガメの可視光の重ならない範囲を探して設置することで、漁獲効率を落とさずにウミガメ混獲を減らすことができるでしょう、という内容の論文でした。

成果がクリアに現れていて、とてもいい研究だと思うのですが、LED照明つき刺し網というのが実際の操業にあたってどれだけ手間がかかるのか、という点についても検討してほしいところです。ひっかかって切れたりしたら意味がない分、より現場での注意が必要になるのでは。なんにせよこうした研究成果がきちんと報告されたのはいいことですね。
posted by かめふじ at 01:27| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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