2013年11月25日

【論文】ウミガメに乗った外来生物

珍しい報告です。とりあえず僕はまだ日本では見たことがありません。

Unintended backpackers: bio-fouling of hte invasive gastropod Rapana venosa on the green turtle Chelonia mydas in the Rio de la Plata Estuary, Uruguay.
Lezama et al. (2013)
Biological Invasions, 15, 483-487.
アオウミガメに乗った外来生物:アカニシ貝

akanisi.jpg

写真の通りです。

こんなデカい巻貝が付着しているカメは僕も見たことがありません。このアカニシは90年代頃にこの海域に侵入してきたようですが、これがまたウミガメに乗ってさらに分布を広げてしまうんではないか、またこの巨大な殻がウミガメの遊泳に余計なコストとなってマイナスの影響を与えているのではあるまいか、と二重の意味で心配されています。

ところでこのアカニシガイというのはどうやらとてもおいしい食材のようで、日本ではけっこう重宝されているようです。また、昨今の偽装表示問題でも取り上げられニュースになっておりました。美味しいなら美味しいでそのままアカニシ貝って書いて出せばいいのに…

どうでもいいハナシですけど写真の漂着死体、通常のウミガメストランディング臭に加えてさらに貝の腐臭ってこの現場本当にキツそうですね。さすがの僕もちょっと耐えられる気がしません。
posted by かめふじ at 07:43| Comment(1) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月24日

【論文】ウミガメの生残率はどれくらい?

僕はテレビもってないので見てないんですけど、先日アカウミガメのテレビ番組がやってみたみたいですね。で、これは前からずっと気になっていたことなんですが、こういうテレビ番組のナレーションでは「この子ガメのうち無事成体になれるのは5000頭に1頭と言われています」みたいなのがもう決まり文句みたいな感じで言われるわけですよ。まぁ海洋生物なんてのは初期減耗で一気に減るもんですからそこはそれでいいんですけど、それにしてもこの5000分の1という数字はどこからきたの、というところがずっと気になっていたのです。

5000分の1ですよ。思いっきり話を単純にしてしまいますけど、一頭のメスが1回の産卵でおよそ80〜120個くらい産卵します。ここでは一回100個の卵を産むとしましょう。で、一頭のメスは2〜3年に一回産卵期を迎え、1シーズンに3〜5回上陸して産卵するわけです。ここでは5回としましょうか。で、産んだ卵の全部が全部孵化して海に向かうわけでもありません。同じ浜でも産卵した場所によって孵化率はまちまちですが、ここでは8割孵化すると仮定します。そうすると、1頭のメスのウミガメは1シーズンに500個の卵を産んで、その中の400個が孵化して海に向かうわけです。雌雄比1:1と仮定するとメス成体の数は半分です。実際に5000頭に1頭しか成長して繁殖しないのであれば、ウミガメのメス成体は最低でも10000個体の子ガメを海に向かわせなければならないのです。1シーズンに400個体ですから、実に25シーズンも産卵にやってこなくては個体群が維持できない計算になります。産卵周期が2年に1回だとすると50年間無事に産卵し続けてようやくトントンという計算です。ウミガメの寿命ってのは実際にはよくわかっていないのが現状なのですが、さすがにこれだけ生残率が低かったらとっくの昔に絶滅してるんじゃないの、と思っていました。

で、その番組でも「5000分の1云々」と言ってたっぽいんですけど(参考ツイ)、ソースはなんなのよ、と。子ガメは甲長40pくらいまでどこで何してるかはほとんどわからなくてロストエイジなんて呼ばれちゃうくらいなのに「5000分の1なのです」なんて言っちゃっていいのかよ、と。

というわけで今日紹介する論文はこちらです。

Estimating survival rates of uncatchable animals: the myth of high juvenile mortality in reptiles.
Pike et al. (2008)
Ecology, 89(3), 607-611.

この論文ではウミガメだけでなく淡水カメやトカゲ、ヘビなどについても幼体の生残率の推定をしています。推定方法の詳細は省略しますが、そこではアカウミガメは0.002(500分の1)、アオウミガメでは0.005(200分の1)とこれまでソースなく言われてきた数字よりも高い生残率がはじき出されたのです。

ここで生残率が高かったから保全の必要はない、みたいな方向にいっちゃうと困るのですが、この研究をきっかけに従来よりも意外に生残は良いっぽいのにどうしてウミガメ全体の個体数は減っているとされているんだろう?というように考えるきっかけになるといいですね。
posted by かめふじ at 20:34| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月14日

【論文】ウミガメの嗅覚

紹介しろ、と右回りなんだか左回りなんだかよくわからない軟体動物に言われたのでひさびさに論文紹介します。

Detection of coastal mud odors by loggerhead sea turtles: a possible mechanism for sensing nearby land.
Endres & Lohmann, 2013
Marine Biology, 160(11), 2951-2956


ウミガメの嗅覚について


ご存じのとおりウミガメは広大な範囲を回遊します。今回の論文で対象としているアカウミガメなどは、日本で生まれた個体は黒潮にのって太平洋を横断し、カリフォルニアの方で餌を食べて大きくなり、そしてまた繁殖のために日本近海に戻ってくるというスケールの大きな回遊行動が知られています。

そんなウミガメさんたちですが、彼らがいったいどうやって自分が泳いでいく方向を決めているのか?という点についてわかっていることとまだよくわからないことがあります。これまでに明らかにされたものでは、ウミガメはどうやら地磁気なんかを感知して自分の居場所を把握しているようだ、という研究が知られています。このあたりは本研究の共著者であるLohmannさんが精力的に明らかにしてきたものです(研究たくさん)。



この研究では以下のような水槽を用いて行動実験が行われました。
suisou.jpg
水槽と土の入ったカップをそれぞれパイプで繋ぎ、扇風機を用意してカメに土の匂いを嗅がせます。そのときのカメの行動をビデオカメラで記録し、どんな行動をとったかのデータを採ったようです。この実験に用いられたカメは人工飼育由来の生後5か月程度のアカウミガメで、野外経験のないカメたちです。また、対象区としてカラッポの匂いナシの状態でも同様にカメの行動を記録しています。

その結果がこちらの図です。
fig1.jpg
縦軸は鼻っ面を水面の上に出していた時間、左のバーが土の匂いあり、右のバーが匂いナシのときの時間です。この結果を見ると、土の匂いがするときには水面近くで何か嗅いでいる時間が長いようだ、ということがわかります。

また、匂いならなんでもいいのか、それともやっぱり土の匂いに反応しているのか、を確かめるため、土だけでなくシナモンやらジャスミンやらレモンやら、といった別の匂いのするものでも同様の実験をしています。その結果が以下の図です。
fig2.jpg
これを見ると、シナモンやらなんやらには全く反応していないことがわかります。
そんなわけでどうやらアカウミガメは土の匂い、つまり陸地の存在に対して敏感に反応していることが示されました。

今回の実験では、土の匂いがすると水面近く過ごす時間が長かったわけですが、何故匂いがすると表層にいるのか、という理由についてはよくわかりません。そして、匂いがすればなんでもいいというわけでもない。まぁシナモンだのなんだのはそもそも海に存在しないものですので、ウミガメがそれを感知するように進化しなかったということは言えるかと思います。

また、生まれた砂浜に戻ってくるという母浜回帰にこの嗅覚が重要な役割を果たしているのではないか、などと考察されています(これまでに母浜回帰が実際に証明されたわけではない)。ただ、特定の砂浜に固執して産卵する母ガメがいることは事実なので、嗅覚による情報もウミガメにとっては意外に重要なのでは、という研究でした。
posted by かめふじ at 01:10| Comment(0) | 論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする